毎日の奇跡
夜、眠る前、
隣で寝ているハルの手を、
時々こっそりと握ることがあります。
もう随分成長したと思っていたけれど、
その手はやっぱりちいさくて、柔らかくて、とても温かい。
二年と一寸前には、確かにこの子は私のお腹の中にいて、
もうほんの少し遡ると、この世界に存在すらしていなかっただなんて、
本当に不思議です。
目の前で寝息をたてているハルは、
そうか、私の子どもなのか、
私はお母さんになったのか、
などと、今更に驚いてしまいます。
齢九十を過ぎた父方の祖父に妊娠を伝えた時、
祖父が「なんだかもう、胸がいっぱいになっちゃうねえ。
奇跡、としか言い様がないんだなあ。」と、
その思いを話してくれたように、
今、ハルが此所にこうして生きているということは、まさに奇跡であって、
そう考えれば私は毎日奇跡を目の当たりにしているのだという
心持ちにもなります。
起きている時には、やれご飯は要らないからトマトだけ食べたい、
散歩は行きたいけど着替えは嫌だ、抱っこで天井を触らせてほしい、等々、
とにかく大変な騒ぎのハル。ですが、いざ寝ている顔を見ると、
昼間の疲れもいつの間にか、ゆるゆるとどこか遠く溶け流れていくようです。
“明日も、沢山笑おう。”
起こしてしまわないように、そっとハルの手を握りしめて、
名残惜しいような気持ちで幾度もその寝顔を覗き込みながら、
ようやく眠りにつく夜です。