名探偵お母さん『残された歯形の謎』
林檎を食べている途中で、
隣の部屋へと走って行ってしまったハル。
声を掛けても戻らないので仕方なしに様子を見に行くと、
ハルはすでに遊びに夢中です。
そして床には、ぽつんと転がる、かじりかけの林檎。
「ハル、林檎さんはハルに美味しく食べてもらいたくて
来てくれたのに、こんなふうにポイポイしたら悲しいよ。
食べられないときは無理しなくても良いから、お皿に置こう。
ごちそうさまも、ちゃんと言おうね。」
寂し気に横たわる林檎の欠片を拾い上げ、
話をするのですが、ハルはなんと知らん顔をするのです。
その表情があまりに可愛らしく、
思わずたじろいでしまった私ですが、
林檎の欠片にはくっきりとハルの歯形がついています。
動かぬ証拠を前に、とうとう己のしたことを認め、
林檎にごめんなさいとごちそうさまをするハルでした。