我が家は、トマトの種だらけ。

二歳の娘との、毎日の暮らしを綴っています。

花森安治さんと見つめる暮しのこと

 

あるとき、仕事終わりの夫が、

一冊の古雑誌を手に帰ってきたことがありました。

 

その頃住んでいた家の近くには、なかなかに好い品揃えの古本屋さんがあり、

二人してよく足を運んでいたのですが、その日は夕方ふらりと立ち寄った際、

何気なく手にした雑誌の内容に衝撃を受けて思わず買ってしまったとのことでした。

それが『暮しの手帖』、第2世紀の第1号、私と花森安治さんとの最初の出会いです。

 

1969年に発刊されたその雑誌で、当時編集長を務めていらした花森安治さん。

現在NHKで放送されている、朝の連続テレビ小説とと姉ちゃん』では、

唐沢寿明さん演じる花山伊佐次さんのモデルとなっていらっしゃいます。

 

雑誌『美しい暮しの手帖』(現在『暮しの手帖』)の創刊に携わり、

以降、企画や編集、文章、表紙画、紙面構成から装釘まで、

多岐にわたってご活躍をされました。

  

 

さて、我が家にやってきた『暮しの手帖』の内容はと言えば、

台所仕事への提案や、季節の食材を使ったおかずの作り方、

趣味や、装いのこと、新商品の批評や、世相についてなど等。

 

気の向いたときに適当な頁を開く私の読み方ですと、

そのたび新たな発見のある程に十分な読み応えです。

そして、いずれもが、ほんのわずかの手間や心持ちの整え様で

毎日を愉しむための、知恵と工夫に溢れています。

大変な密度で織り上げられたような言葉や、添えられた絵からは、

日々の暮しを慈しむ花森さんの切々とした思いが伝わってくるようです。

 

何よりも暮しというものを大切に考えながら、それを脅かす存在があれば

ときにたたかうことすらいとわぬ姿勢は、賛否両論を巻き起こしながらも

暮しの手帖』を国民的雑誌に押し上げ、今日に至ります。

 

そのきわめて特異な方針は、広告を掲載せず、中立公正を保ちながら、

政治であれ企業経営であれ、娯楽であれ、色々のことにもの申すというもの。

背景には、戦時中、花森さんご自身が

戦意高揚の国策に協力したことへの後悔があったそうです。

 

「…誰もかれもが、なだれをうって戦争に突っこんでいったのは、

ひとりひとりが、自分の暮らしを大切にしなかったからだと思う。

もしみんなに、あったかい家庭があったなら、戦争にならなかったと思う。」とは、

花森さんが『美しい暮しの手帖』を立ち上げる際に仰ったという言葉。

 

平穏無事な日常の、いかに尊いか。

そのことを、戦争によっていやという程に思い知らされたからこそ、

毎日を丁寧に生きることで暮しそのものを守ろうとなさったのかも知れません。

 

例えば、寝起きをする部屋や食事をする部屋、

家族の集まる場所などを、できるだけ綺麗にしつらえること。

毎日隅々までとはいかなくとも、

目につくところくらいは心地好くいられるよう掃除をすること。

ささやかでも季節ごとの花を飾ってみたり、

服を皺のできないようきちんと仕舞ったり。

あまり多くものを持つのでなしに、手元のお気に入りたちを長く大切に使うことや、

一寸がんばって早起きをすること、自分や家族の好きなおかずをつくること。

 

それは、実際にできるか否かではなく、そうしたいと努めること、

その心持ちが大切なのだという気がします。

 

 

ひたすらに繰り返される毎日のなかで、

暮しということについて考えるならば、

それは、けして特別のなにかに依るのではなく、

むしろあんまりささやかであるために

ないがしろにしてしまいがちなことと向き合い、

その営みのなかにちいさな喜びを見いだしていくことのようです。

 

 

どうかすると、なんとか楽に済まそうなどと考えて、

かえって余計の手間を増やしてしまうことさえある私ですが、

それでもできるだけ今日という日を丹念に生きようと思わせてくださる花森さん。

 

幾らでもないような手間ひまや、そこに注ぐ思いを紡ぐことで、

私たちの一日一日はこんなにも豊かになる…。

花森さんの言葉は、そう教えてくださっているようにも感じられます。

 

 

 

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随分長くなってしまいましたので、

次回、夫が衝撃を受けたという特集、

かの有名な商品テストについて書きたいと思います。

それでは、また。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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