ハルの絶望
ハルは、転んだ際などは割に平然としているのですが、
思いがけないことで不意に泣き出すときがあります。
先日は、お出掛けをしようと身支度を整えているなか、
ハルが持っていきたいと言っていた絵本を
私のリュックサックにしまったところ、急に泣き崩れました。
その様子が、まるでこの世に絶望したかのごとくあんまり全力なので、
私はなにやらよくわからない励ましの言葉をかけたりなどしてしまいました。
「そうか、ハルは自分で絵本を持とうと思ったのね、すごいね。
じゃあハルにお願いするから、がんばってね。」
あたふたと絵本を取り出して手渡すと、それをしっかと抱えるハル。
少々、いえだいぶ大仰にも感じられますが、
ハルにとってはとても大切なことだったようです。
心が苦しくなることは事実として受け止めてあげたい。
けれど、自分ではどうにも救いのないように思われることであっても、
ほんの一寸距離を置いてみれば存外どこかに幸いはあって、
それ程絶望することもないのか知れない…。
ぼんやりそんなことを考えていると、
ハルはもうすっかり機嫌を良くして、ひとり玄関で
アンパンマンの『サンサンたいそう』の歌を口ずさんでいたのでした。