ハルの庭

三歳の娘との、毎日の暮らしを綴っています。

今年の目標「本を読む」

 

私は、それなりに意気込んで始めたことも

大概途中でうやむやにしてしまいがちなのですが、

今年は懲りずに一年の目標なるものを考えてみました。

 

それは「できるだけ毎日、ほんの一頁ずつでも本を読むこと。」です。

 

目標と言うには、すでにだいぶ弱気ですが、

とにかく今回はあまり無理のないようにして続けていきたいと思っています。

もともと読書は好きだったものの、近頃はなんやかんやとほとんど読めず、

そのうちにまとまった時間ができたら再開しようなどというつもりでいました。

ですが、ふと考えてみれば当面この慌ただしい状況は変わりそうにありませんし、

これはよほど意識して時間を設けなくてはと思い直した次第です。

 

早速、潔く諦めるような日もありますが、それでも今のところはなかなか順調です。

そして、改めて本というのは良いものだなあということをつくづく感じています。

 

ともすると私は、自身の視野の狭さに

息苦しくなってしまうことがあるのですが、

多様な方の言葉に触れていると、

世界がいかに豊かなものであるかを思い出すことができます。

 

 

ここしばらく夢中になって読んでいる本は、

西村亨先生の著書『王朝びとの四季』です。

この場合、王朝と言うのは古今集歌人源氏物語などの小説のモデルが生きた

平安朝の後期王朝時代を指すそうなのですが、

その時代の日本人が懐いた季節感や自然観を追求しながら、

それらがいかに人々の生活に深く結びついていたかということについて

論述されたもので、実に興味深い内容です。

 

お恥ずかしながら、もう本当にいい加減の記憶なのですが、

何かで読んだ、どなたかの美しい言葉の中に、同書についての記述があり、

気になって急ぎ購入したのでした。

 

 

せっかくですので、その中から

お正月に関連する一節を少し、ご紹介させてください。

 

「日本人はいったいに縁起をかつぐのが好きな国民だけれども、

ことばの上でもとかく縁起をかつぎたがる。この習性は昔も今も変わらないようで、

王朝の人々も『言忌み(こといみ)』と言って、めでたいことばを唱えたり、

不吉なことばを忌んだりしたが、正月元日にはことに『言忌み』を意識している。」

 

めでたいことばを唱えることも「言忌み」と言われたそうですが、

当時なにかというと引き合いに出された古歌として、

次のようなものに言及されています。

 

 

「天地(あめつち)を袋に縫ひて 幸ひを入れて持たれば、思ふことなし

 

 

(中略)宮廷の女性たちが正月の鏡餅を祝う時、この歌を三べん唱えたという

伝えのある歌であるが、昔から縁起をかつぐ時にそのおおげさな表現が、

おおげさと知りつつも喜ばれたのであろう。

  

 

天と地を縫い合わせて大きな袋を作って、

それにいっぱいの幸福を入れて持っているから、自分は何ももの思いがない。」

 

 

西村先生が「誇張も甚だしい歌であるが」と文中で仰るように、

確かに随分と欲の深いことを言ったものだと可笑しくも思われますが、

それでいて、天と地の間に自分たちがあるのだということを

当たり前に捉えた自然観には感服しました。

 

そして宮廷での優雅な生活とは言え、権力争いに始まり、

飢饉や流行病、祟り等々、当時を生きる人々には

今とは異なる苦労もさぞ多かったろうことを想像すると、

そんなおおげさな歌に込めた願いの切実さや、

欲を張る程のたくましさに、

なにやらいとおしいような気持ちにもなるのです。

 

 

本当に、誰も彼もがそんなにも多くの幸いを持って

生きることができたら、どれだけ良いでしょう。

 

不幸せになりたい人なんていないはずだのに、

どうして悲しいことがなくならないのかということに、

悲しくなってもしまいます。

ですがそんなときには、この歌を唱えた人々の生き様に思いを馳せて、

もう一寸前向きにやってみよう、という気にさせてもらったのでした。

 

どうやらすでに絶版とのことで大変残念なのですが、

もしかお近くの図書館などの蔵書にございましたら、

ご興味のある方にはぜひ一度お読みいただきたいおすすめの一冊です。

 

どうか皆様の過ごす日々も、抱えきれない程の幸いでいっぱいでありますように…。

 

 

 

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