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我が家は、トマトの種だらけ。

二歳の娘との、毎日の暮らしを綴っています。

花森安治さんと読む『暮らしの手帖』

おすすめの人

 

おすすめの人、花森安治さんの特集も今回で最後です。

 

さて、『暮しの手帖』には、創刊以来

大切に引き継がれている花森さんの言葉が掲載されています。

表紙の裏面に綴られた、“暮しの手帖宣言”とも呼ばれる一文です。

 

「これは あなたの手帖です

いろいろのことが ここには書きつけてある

この中の どれか 一つ二つは

すぐ今日 あなたの暮しに役立ち

せめて どれか もう一つ二つは

すぐには役に立たないように見えても

やがて こころの底ふかく沈んで

いつか あなたの暮し方を変えてしまう

そんなふうな

これは あなたの暮しの手帖です」

 

暮しの手帖』という言葉の持つ馴染みよさは、

本当に、これがもっとも人々の身近にあることを願って

つくられているものであるからかも知れません。

いつでも、すぐ傍にいて、暮しに寄り添うもの。

それはちょうど、大切なことのすべてが書きつけてある手帖のようです。

 

私たちの一生のうち、ほとんどは何ということもないふうな

日常で出来上がっているわけですから、それを愉しまない手はありません。

この“暮しの手帖宣言”に始まり、雑誌『暮しの手帖』は、

その内容のどれもが、私たちのそうした

ささやかな暮しのためにこそ、書かれているのです。

 

せっかくですので、少し内容をご紹介すると、

まず最初の特集は『さながら美しい音楽のように』と

題して書かれた、生き生きとした新しい家事について。

これは、服を選ぶのと同じに、台所仕事の道具を色で統一することの提案です。

 

アメリカの暮しの合い言葉だという「MORE TASTE THAN MONEY」が、

「ベツニ オ金ヲカケナクテモ センスガアレバ タノシク暮ラスコトガデキル」

との添え書きとともに登場します。台所で使う道具ひとつとっても

実に多くの色柄をしたものが溢れる昨今ですが、

まさに音楽のひびくように調和を図ることで、

今よりもう一寸美しく、心地好く暮せるはずですよ、というお話です。

「多少お説教めいてはいてもちょっとしゃれています」と、

他所の文化や価値観も、良いものは良いと受け入れられる

心持ちが実に清々しい印象を与えます。

 

そして、つくる過程まで写真つきで教えてくださるお料理の頁。

トリの安いときに重宝だというデミドフふう、

焼き魚になるものならなんでもというイタリーふう魚のあみ焼き、

他にも鮭とゆで玉子のポテトサラダやヴァレンシアふう干だらごはん。

さらには夏の中国料理二種やぜんまいの煮付け、

ごまどうふ、きゅうりもみ等々。

 

いずれも、けして難しいことはなく、できるだけ簡単に、

見栄えよく、美味しく食べられるよう工夫されています。

身近の食材で、コツなど要らないようにと考えられたおかずの作り方は、

家族やお客様への心遣いの感じられる、それでいて肩肘の張らない、

毎日の暮しのなかのおそうざいといったふうです。

 

 

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それから、『すてきなあなたに』という題のエッセイ。

花森さんとともに『暮しの手帖』を創刊した大橋鎮子(おおはししずこ)さん

という方が担当されたものですが、この方はNHKの朝の連続テレビ小説

『ととねえちゃん』でヒロインのモデルとなっていらっしゃいました。

 

「暑いかと思えば、急にセータがほしい気温になるさわぎがたびたびで、

からだがへんになりませんか、お気をつけなさいませ。」とか、

「家族みんなと食卓につこうというとき、どなたかが、おみえになったとき、

そんなとき、主婦が、かけていたエプロンを、そっとはずして、たたむ、

あのなんでもないようなしぐさの中に、一家をあずかる人のけじめがみえて、

いっそ美しくみえるものです。」という具合に始まる読み物、

なんだかもう素敵な予感がしませんか。

 

他にも、コンタクトレンズの危うさについて警鐘を鳴らしたり、

胃ガンの最新情報をこまかに検証してみたり、

まる洗いできると銘打たれたスーツを購入して散々な思いをしたことや、

家族の暮しの悲喜こもごも、棚の吊り方、様々の寄稿から、

なんとカヌーの作り方まで、暮しにまつわる話が所狭しと、

それでいて行儀の良く並んでいます。

 

 

なかなか自分の好きにできない毎日の中で、少しでも丁寧に

暮したいという気持ちから読み返してみた『暮しの手帖』。

そこに見る、市井の人々の、つつましくも幸福な暮しぶりには、

自分へと繋がる連綿とした営みを感じるような喜びがあります。

今回、花森さんご自身のお考えや、その背景に触れ、

これまで以上に愛読するようになりました。

 

実を言えば、花森安治さんという方について、

その特徴的なスカートにおかっぱ頭という装いから

女性かと思い違いをする程に、以前はほとんど何も知りませんでした。

そうした格好は、女性の気持ちを知るためとも言われますが、

ご本人はなにも仰らなかったそうです。

色々に思いはあったのでしょうけれども、そんなこととは関係なしに、

着たいと思う服を着て、したいと思う髪の型を愉しめる、

そんな世の中を望んでいらしたのではないかというような、

私には、今はどうもそんなふうな気がしています。

 

 

誰もが自分の、自分たちの暮しを大切にして、

そうして皆が当たり前のように過ごしている日常を何より尊いものと思えるように。

そういうことのための雑誌を創りたいと励まれた花森さん。

私の尊敬する、おすすめの人です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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